転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


182 鳥揚げに似てるけどまったく違うんだよ



 最初に作ったマヨネーズがとんでもない物になっちゃったけど、これって有精卵を使ったからだよね? なら無精卵を使ったらどうなるんだろう?

 今までいろんな魔物のお肉を焼いて食べたりしてるけど、本格的な料理ってした事がなかったんだよね。

「多分大丈夫だと思うけど、やっぱり別の卵でも確かめないといけないかなぁ」

 鑑定解析で調べた感じからすると多分違うとは思うけど、もしかすると僕の料理のスキルがヒールマヨネーズを作るレベルに達してたからアイテム化したって事かもしれないもん。

 それなら無精卵で作ったら上級ポーションくらいの効果があるものは作れなくても、下級ポーションくらいの効果が出るものは作れるかもしれないから、一応作ってみるべきだって僕は思ったんだ。

 でもお母さんからは、卵を使うなら2個までにしてねって言われてるんだよね。

 だからもっと使ってもいい? って聞きに行ったんだ。


「あら。2個じゃ足らなかったの? まよねーずって言うのはいっぱい卵を使うのね」

「ううん、違うよ。最初に作ったのがなんか凄いのになっちゃったから、他のでもなるか試してみようって思ったんだ!」

 僕は何でもう一回マヨネーズを作ろうって思ったのかを教えてあげたんだけど、お母さんはほっぺたに右手を当てて頭をこてんって傾けたんだ。

「えっと、凄く美味しくできたって事なのかしら?」

「とっても美味しくできたんだけど、そうじゃなくて凄いのができちゃったんだってば! だからね、違う卵でもできるか、やってみるんだよって言ってるじゃないか!」

 そう言ってもお母さんは解って無いみたいなんだ。

 もう! 何で解んないかなぁ。

「う〜ん。お母さんにはちょっと難しくて解んないけど、もしかしてセリアナの実の時みたいに錬金術ってのでお薬にしちゃったって事?」

「違うよ。僕、マヨネーズを作ってただけだもん。でもね、食べたらお怪我は治るんだよ」

 こんなに一生懸命僕が教えてあげてるのに、お母さんはさっぱり解って無い見たいなんだ。

 だからもっとよく解るように教えてあげようって思ったんだけど、

「降参よ、ルディーン。お母さんにはちょっと難しくてよく解らないわ。でも、ルディーンが知りたい事を調べるのには卵がもっといるのよね? なら使ってもいいけど、あと2個だけよ。いっぱい使ったら他のお料理が作れなくなっちゃうからね」

 お母さんは聞いても解んないからって、卵を使ってもいいよって言ってくれたんだ。

「うん! ありがとう、お母さん」

 マヨネーズを食べたら怪我が治るってだけなのに何で解んないかなぁ? って思うんだけど、卵を使うのを許してくれたからこの話はこれで終わり。

 お母さんにバイバイってして、僕は台所に戻ったんだ。


 と言う訳で、今度は無精卵を使ってマヨネーズ作り。

 ホントならもう一個有精卵を使って白身入りでもヒールマヨネーズになるか確かめたい気もするけど、有精卵は数が無いから今回はやめて、無精卵を使った黄身だけのマヨネーズと白身も入れたマヨネーズの二種類を作る事にしたんだ。

 で、その結果はと言うと……。

「やっぱりただのマヨネーズにしかならないか」

 出来上がったのはただのマヨネーズで、有精卵を使った時みたいに料理アイテムにはならなかったんだ。

 でもね、鑑定解析で調べてみたら、どっちもクラウンコッコの卵を使った事で魔力を多く含んだ体によくてとっても美味しいマヨネーズになったみたいなんだよね。

 だって説明文の最後はヒールマヨネーズと同じだったんだもん。

 これなら美味しいマヨネーズを食べてくなったからって危ない思いをしてまでクラウンコッコと戦わなくても、森に落ちてるやつを拾って来るだけでいいって事なんだ。

「良かった。これなら今作った分をみんな食べちゃっても、すぐに次のを作れるね」

 その結果を見た僕は、にんまりしながら黄身だけのと白身も入れたの、両方のマヨネーズをそれぞれ違う形の入れ物に入れて冷蔵庫の中にしまったんだ。


 その日の夕方、僕はお母さんや御姉ちゃんたちと一緒に台所で晩御飯を作る事にしたんだ。

 だって折角マヨネーズができたんだもん。ならそれをつけて食べるお料理も作らないとね。

「あらルディーン、今晩もまた鳥揚げにするの?」

「ううん、違うよ。から揚げを作るんだ」

 お母さんには勘違いされちゃったけど、僕が作ろうって思ってるのはクラウンコッコのから揚げなんだよね。

「クラウンコッコのお肉を揚げるのよね? なら鳥揚げじゃない」

「そうだけど、ちょっと違うんだよ」

 レーア姉ちゃんからこんな風に言われちゃったけど、この二つは同じようでまったく違うんだよなぁ。

 鳥揚げってのは切った鳥のお肉に塩胡椒をしてあげるだけなんだけど、から揚げはそれとは違って結構手間をかけるお料理なんだよね。

 まぁ口で言ってもよく解んないだろうから、僕はとりあえず一度作ってみることにしたんだ。

「お母さん、モモのお肉、取って」

 僕はお母さんにとって貰ったクラウンコッコのモモのお肉を一口大よりちょっと大きめに切っては、横に置いたボウルの中に入れてったんだ。

 でね、ある程度切ったお肉ができたところでそこに塩と胡椒を入れてもみもみ。

「なんだ、やっぱり鳥あげとおなじじゃない」

 それを見てこんな事を言うキャリーナ姉ちゃん。でもここからはちょっと違うんだよね。

 僕はそのもんでたお肉の中に、マヨネーズを作ってる時に使わないからって冷蔵庫に入れておいたクラウンコッコの卵の白身と、それだけじゃ黄身が入って無いから普通の鶏の卵を割って入れたんだ。

 そして予め作ってあった、すりつぶしたにんにくを入れてまたもみもみ。

「お母さん。そこにあるお父さんのお酒、取って」

 そして最後にお父さんが夜飲んでる中から蒸留酒をお母さんに取ってもらって、その中に入れたんだ。

「ずいぶんといろんな物を入れるのね」

「うん。後はこれをちょっとの間、付け込んでおくんだ。そうするとお肉に味がしっかり付くからね」

 鳥揚げだと塩胡椒してすぐに揚げちゃうけど、これはちゃんと味がしみこむまで置いとかないといけないからね。

 だからこれは一旦横において、みんなで一緒に食べるお野菜を切ったり、クラウンコッコと一緒に揚げるお芋を切ったりしたんだ。

 で、それが終わる頃にはしっかりと味がしみこんだってことで、最後の行程だ。

 違うボウルに小麦粉を入れてもらうと、僕はその中に一つずつお肉を入れてはしっかりとまぶしてからパタパタ。

 ジュウッ。

 余分な小麦粉を落としてから横にあるお皿に置くと、それをお母さんが油に入れて揚げて行ってくれたんだ。


「へぇ、ホントに鳥揚げとは全然違うんだね」

「うん。このからあげってのの方が、鳥あげより味がしみこんでるし、まわりもパリパリしておいしい!」

 そのあと、お父さんやお兄ちゃんも呼んで晩御飯になったんだけど、僕とお母さんとで作ったから揚げはお姉ちゃんたちに大好評だ。

 でもね、今日のメインイベントはこれじゃないんだよね。

 と言う訳で、僕は冷蔵庫から出した壷におさじを入れてクリーム色の物を掬うと、それをから揚げの上にポトリ。

「っ!?」

 それを一口かじると、お口の中いっぱいにマヨネーズとクラウンコッコの油の味が広がったんだけど、僕はそのあまりの美味しさに凄くびっくりしちゃったんだ。

 だってこのマヨネーズ、この間ロルフさんちでノートンさんに作ってもらったのよりかなり美味しかったし、クラウンコッコで作ったから揚げも僕が思ってたのよりもはるかに美味しかったからね。

「なんだ、それ?」

 あんまり美味しかったもんだから僕はすぐに次のから揚げにフォークを突き刺して、口に入ってるのを飲み込んだらすぐに次のを食べようとしてたんだけど、その様子を見てたディック兄ちゃんにこう聞かれちゃったんだ。

 だから僕はお口の中のお肉を飲み込んだあと、

「今日僕が作ったマヨネーズってソースだよ。お肉にもお野菜のも、とっても合うソースなんだよ」

 って教えてあげたら、ディック兄ちゃんじゃなくてお父さんが食いついてきたんだ。

「おお、それが貴族でもあんまり食べられないって言うソースか。おい、ルディーン。ちょっとこっちにもくれ」

 別に独り占めしたいわけじゃないから、僕は壷から次のから揚げにつけるマヨネーズをお皿に入れると、お父さんに渡したんだよね。

 そしたらそれをつけてから揚げを食べたお父さんが大騒ぎ。

 でもって、そんなお父さんを見たみんなが我先にとマヨネーズを自分のから揚げにかけては美味しい美味しいって食べて行ったんだ。

「おっ、このソース、こいつにかけても悪く無いぞ。いやぁ、今までルディーンは甘い物ばっかり作ってたけど、こんなのも作れるんだなぁ」

 でね、お父さんはそんな事を言いながら付け合せのお野菜や揚げたお芋にもいっぱいかけて美味しそうに食べるもんだから、みんなも真似しちゃってお皿の上はマヨネーズまみれになっちゃった。


 この日から僕の家ではご飯の時は必ずテーブルの上にマヨネーズが置かれるようになってたもんだから、あんなにいっぱい作ったのにあっと言う間になくなっちゃって、その後は手に入るかどうか解らないクラウンコッコの卵じゃなく、味は落ちるけどお金を出せば普通に手に入る鶏の卵で作ったマヨネーズが僕んちの冷蔵庫にいつも入るようになったんだ。

 そしてこんな状況なんだから、当然冷蔵庫に入れてあったヒールマヨネーズが無事なはず無いよね。

、結局他のマヨネーズと同じように食卓に上がって、その効果を発揮する事無く僕の家族のお腹に入ることになったんだ。



 マヨラー家族誕生。


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